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zoom RSS 詩歌藩国戦争準備状況〜文士 鈴藤瑞樹の場合〜- 玩具箱@鈴藤瑞樹

<<   作成日時 : 2007/01/09 22:15   >>

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「しばらく留守にしている間に、この国も変わったものだな」
私用で国外へ行っていた私、鈴藤瑞樹は思わずそうつぶやいた。ほんの数日前までは国中が冒険だ、お宝探しだと活気づいていたというのに。
街中を歩いていても、軍用車両やガンブレイズシンガーの姿が目につく。帝國宰相府も正式に戦時動員を発令したという。
人々から笑顔が消え、不安、恐怖、悲しみが広がっていた。



他国では根源種族の兵器とおぼしきものまで出現したという。
この国が戦場となることも、あるのだろうか。


戦争の始まりが、近い。


私は文士の一人として、この国の歩む道を記すことにする。
願わくば物語の終わるその時に、みなに笑顔があることを。
すべての人に、ハッピーエンドが届くを。


/*/


 まったく、シリアスは専門外だというのになどとのたまいつつ研究都市はラーイルーカ通りを行く鈴藤。
黒いスーツケースを片手に街の様子を見てまわっていた。軍事都市ほどではないが、ここにも戦争の影響が露骨に出始めている。
雪解けもまだだというのに、非難用の地下シェルターの設置や戦闘用の大容量送電線の埋設などが行われている。
夜も徹して急ピッチでの作業が続いているのだろう、疲れている様子がありありと見てとれる。
まだまだ工事は続くだろう。相手が相手だけに、準備しすぎるということはないのだから。
作業員の一人がこっちを見て敬礼を送ってきた。政庁で着る礼服を見て軍人だと思ったのだろうか。政庁勤めが決まった時に少しだけ習った敬礼の仕方を思い出しながら返礼する。
ぎこちなかったが、相手は満足そうに笑ってくれた。もっとうまくできるように練習しておこう、と密かに決意。


王都に行って政庁に顔出さなきゃな、と考えた。


 崎戸剣二は寡黙な男だった。無愛想だ、笑ったところを見たことがないと言われ続けてはや幾年、終いにはあいつ来須の同一存在なんじゃないかという噂まで流れた。
見た目は筋骨隆々の彼だが、これでも文を書いて飯の種とする文士である。
国内探索の折に動員された面々から詳細を聞き出し、事細かに描写したレポートを提出したのは彼だった。その成果を買われ、現在は文士統括の役目を負っている。


その日、戦時動員に対する文士間の意見交換、すなわち文士会議が行われていた。
しかし文士とはもっぱら文章を書くことを仕事とする者のことを言う。戦争に関しては、疎い者がほとんどだった。
さらに言えば詩歌藩国では文士は弱小であった。抜きん出た才能の多い技族と比べ、文族は人数を揃えることすらままならない状態だったのだ。
だらだらと時間ばかりが過ぎていく。口元を隠し、誰にも悟られぬようそっとため息をつく崎戸。
時間の無駄だな、と判断してあーだこーだと議論を続ける文士達に会議の議長として口を挟む。
「ここで話し合っていても埒が明かん、各自が考えうる最善の行動をとること。以上解散」
突然の会議終了に戸惑う文士達。そのうちの一人が意見を口にする。
「しかし崎戸殿、明確な方針も出せずでは藩王様になんと申せば……」
「そうですよ。なんら結果を出せずでは我々の立場が」
「いいからやらんかっ!」大きく吼える崎戸。
ひ、ひぃーと悲鳴を上げて散っていく文士達。むぅ、またやってしまったと思う崎戸。イライラし出すとつい地でしゃべってしまう癖があった。


 「相変わらずですね、崎戸さん」反省中の崎戸に声をかけたのは、政庁へ帰還報告をしに来た鈴藤であった。
「む、鈴藤か。」よく帰ったと簡単な挨拶の後、現状についての説明をする崎戸。
「なるほど。にしても相変わらず大変そうですねぇ」苦笑いする鈴藤。さきほどの怒声が廊下にまで響いていたのだった。
「あぁ、まぁ、少し外で話さないか、鈴藤」聞かれていたのが恥ずかしくて、外で頭を冷やそうと思った。


その後、街に出てしばし歩いていると唐突に川辺に向かう崎戸。土嚢を積み上げる作業を手伝いだした。
「すいませんね、文士様にまで手伝ってもらって」
「気にするな。人手が足りないのはどこも一緒だ」そう言って持ち上げる埼戸。ガンブレイズシンガーとしても優秀な彼は、体力には自信があった。
崎戸にならって手伝い始める鈴藤。しばらく、二人で黙々と土嚢を運び続ける。


「この戦争、勝てると思いますか」しばらくして、そう鈴藤が切り出した。
「わからん」即答する崎戸。何度もなんども自問した問いであるかのように、その答えには迷いがなかった。
「そんなぁ」対して不満そうな鈴藤。できることなら、もっとポジティヴな答えが聞きたかった。
「わからんが、俺達は俺達にできることをするだけだろう。それでも駄目なら頼ればいい。友情に勝る剣はなし、だ」
崎戸は、瀧川防衛線の際わんわん帝國宰相のシロが起草した命令文の一部を口にした。
そうだった。犬は正義を尊ぶ。正しき行いをこそ、よしとする国。それがわんわん帝國なのだから。
隣の国が危機におちいれば助けに行くだろうし、その逆もまたしかりなのである。
「うん、そうですね。なんか俺、元気出ました」少しだけふっきれた鈴藤。そう、今は考えるよりも動く時だと、そう思った。
「そうか」無愛想を装っていても、根はお人好しな崎戸であった。

そうして、二人は日が暮れるまで作業を手伝った。
翌日、疲れきった二人が揃って寝坊して藩王のお怒りを買うことになるのだが、それはまた別の話である。


〜終〜

勝手に崎戸さんと友情を深めてみました。

あと2・の個別の感想
「戦争は勘弁だなぁ、それも相手が美少女となればなおさらだよ」

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玩具
玩具持て遊ぶ道具(玩弄物)を玩具(がんぐ、おもちゃ)という。娯楽用品のうち、普通は持ち運びできるサイズのもので、それ自体を興味や遊びの対象として完結して取り扱われるようなもの、と特徴づけられる。狭義には、玩具の中でも構成および用法が単純または原始的で、特に対象層を子供向けに設定しているものを「おもち... ...続きを見る
子供のおもちゃ屋
2007/01/10 07:39

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