詩歌藩国日報

アクセスカウンタ

zoom RSS ミロと真子の大追跡(笑) - 豊国ミロ

<<   作成日時 : 2007/01/09 20:33   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

帝國宰相府からの戦時動員法の下知を受け、九音・詩歌は藩王の名の下に、戦時突入を藩国内に公布した。戦争が始まる。

戦争に向けて国民一致であたらねばならない。兄弟を脅かすものはこれを退け、姉妹を泣かすものは滅殺する。これがわんわん帝國の伝統であり、誇りだった。詩歌藩国もまた同様である。
このとき、新型I=D導入に向けて整備士たち“メタルカウンセラー”は大わらわで準備にあけくれていた。吏族たち“スターテイラー”も増加した事務手続きや頻発する会議で通常の三倍は忙しくなった。誰も彼も、星を見ていたのが理由の寝不足でなく、疲労から目を赤くしていた。
そんな彼らに比べ、パイロットや歩兵“ガンブレイズシンガー”たちは今のところ体力維持に努める以外は暇であった。そのためスターテイラーの指示の下、警戒任務中の部隊以外の大半が手分けして国民を戸別に回る任務に駆り出されることになったのである。…そこにはついでに家族や友人、恋人なんかにも会ってこいという、裏の意図が明確な言葉としてはないもののあった。

そんなガンブレイズシンガーのひとり、豊国ミロは憂欝である。祖国を捨てざるを得なかった悪夢の日、その記憶はまだ新しいのに再び戦禍にみまわれようとは。ようやく新天地に落ち着いたかと思えばこれだ。
犬敵め、空気読め。なにやらにゃんにゃんの方もきな臭いらしいし、こればかりは猫とも心は一つだぞ。
この戦いが終わったらそのときだけ、猫と鍋囲んで祝勝会やってやる。鍋の四方5mは絶対的中立区域だからな。
あいかわらず食べ物から思考が離れない豊国ミロは、しかし考えながらも忙しく働いていた。なんだかんだいって、同胞を見捨てるくらいなら尻尾を切られる方がましと嘯く生粋の詩歌藩っ子である。備蓄・飲料水の確認と確保(これは彼女が厨房関係者並に食料の在庫に詳しかったため担当にされた)、国民への戦時突入の戸別宣布と避難経路の通達、通信機の配布。課せられた任務のどれひとつとしておろそかにしてはならない。国民の命にかかわることなのだ。
豊国ミロと並んで地下通路(ウェブ)を歩くのは、同僚にして本日の相方である駒地真子だった。家名にちなんで若駒小町と陰で言われているのを彼女は知らない。これは駒地真子が魅惑の脚線美の持ち主で、そのすらりとした脚で元気いっぱいに駆け出していく姿からとある男性兵士が言いだして広まったのだった。
駒地も憂欝だったが、彼女の場合それに増して闘志に溢れていた。今度こそは負けない、今度こそは誰も死なせない。そのためにやれることは全部やるんだー!と勇ましくしっぽを立てて歩いている。
「ね、そろそろ上にあがらない?ウェブじゃなくて地上から行ったほうが隣の地下街(ネットワーク)には早いでしょ」
駒地の言葉に、もぐもぐとあめだまを噛み砕いていた豊国はうなずいた。
「ん。それにその方が端の家から回れるもんね。そーだ、あめ食べる?」
食べる〜、キャッキャッとおしゃべりしながら二人は地上への階段を昇った。そして外に出て凍り付いた。
それは寒さが原因ではない。
「う」
犬耳フードをかぶった赤ん坊が一人、雪の上に座ってきょとんとこちらを見ていたのだ。周辺に親の姿は見あたらない。
「え…まいご「きゃああああカワイーッ!!」
駒地のセリフをさえぎって叫ぶ豊国。おやつを食べた直後であるのも手伝って、一気にハイテンションになり赤ん坊に突進した。
画像

「おしり冷えちゃうよね〜、よーしもう大丈夫だ。おねえさんがだっこしてしんぜよーう」
「あっずるいぞ豊国!わたしにも抱かせてよ。うわあ、きれいな青い目〜ホントにかわいい〜」
「捨て子かなあ。九音さまのとこに連れてった方がいいかな?あっ、ほっぺぷくぷく〜」
「指ちっちゃーい。爪があるのが信じらんないね〜」
きゃあきゃあきゃあ。二人は大はしゃぎで赤ん坊を構った。うるさいだろうに、赤ん坊はにこにことかわいらしく笑っている。そこにまたメロキュンして二人が愛でるという妙な構図ができあがっていた。
そこへ一人の女の子が三人目がけて走ってきた。揺れるポニーテールがかわいい、凛とした雰囲気の子だ。
その子はこちらを、というか二人の腕の中の赤ん坊を見ると一瞬目を大きく見開いた。そしてみるみるうちに顔を赤くし、柳眉をつりあげていく。あっ、なんかこけそう。
「おお、耐えた」
思わずつぶやく豊国。
その女の子は「ば、ばかものー」と叫びながら二人から赤ん坊を取り上げて抱きしめた。それから二人を見て、なぜかそのまま走って逃げていった。強い光を帯びた瞳が印象的だった。
たまたま近くにいた同僚の須藤鑑正がその後ろ姿を見て「いいなあ」ともらすのを聞きつけ、爆笑する二人。
「えっ、えっ、なんだよおまえたち」
「だって須藤くん、最近彼女できたばっかりじゃない。ドラマチックな状況で芽生えた恋!有名な話なのに〜」
「須藤くんは悪い男だなあ。他の子に目移りするなんて彼女がかわいそうだよっ」
ボクはもらい泣きしてしまいそうだよう、と泣き真似をする豊国と悪乗りしてやっぱり泣き真似をする駒地に、須藤は絶句してからみるみる紅潮した。
「ばっか、アイツはそんなんじゃない!たまたま!たまたま拾っただけ!」
須藤は最近、とある任務中になりゆきで一人の少女を保護していた。それ以来あちこちでからかわれ続けて本人はすっかり閉口している。だがまあ、否定はするが拒絶はしないのだから、なんというかそういうことなのだろう。
そんな須藤がふとすねた様子をやめて真顔になったので、豊国と駒地も泣き真似をやめて彼を見返した。
「なあ、今の子誰だ?」
「ナンパ…?」
「いい加減その話から離れろよ。戦争に突入したってニュースは昨日のうちにとりあえずは藩国内に流しただろ?」
「ん。戸別訪問はその確認も兼ねてるもんね」
「だったらさあ、そんなときに赤ん坊連れてうろうろするか?女の子が」
しかも逃げたしなあ、あの子。
「……たまたまかもしれないじゃない」
「ま、そうかもな。でも、一応自分の担当地区にあの子がいないかデータ照会した方がいいかも」
「…」
顔を見合わせる二人。須藤はそう言うと、俺は今猛烈にひらめいている、あれだ、あの色だとなんだか晴れ晴れとした様子で去っていった。それを見送る事無く、一斉にデータ照会する二人。
「該当なし」
「こっちもー。…変だねえ、ボクたちここらへんのネットワーク担当なのにさ。遠くからわざわざここまで来たってこと?」
うーん。悩む二人。あやしいといえばあやしいが、あの少女と赤ん坊はとても悪い人には見えない。
「はっ」
不意に駒地が顔をこわばらせる。
「…観光客だったりして」
「…………」
しーん。
不安に駆られた豊国と駒地はどちらともなく早足で、ついには駆け足になって少女たちを追い始めた。
万が一、万が一遠くからたまたま来ただけならそれでいい。こんなご時世に赤ん坊と女の子が二人だけで地上にいるのは危険すぎるからと、自宅まで送っていけばよいだけだ。しかしもし観光客だったとしたら、避難経路も知らない、通信機ももたないで危険どころの話じゃない。

二度と我らガンブレイズシンガーの前で、民を危険にさらすものか。

二人につられて一緒に走り始めたノリのいい数匹の犬たちと共に、彼女達はその一心で駆けた。
…ただ、心意気とは裏腹に、こんなのに追い掛けられたらかえってびびるだろうという集団になってしまっているのが唯一惜しいところだった。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
ミロと真子の大追跡(笑) - 豊国ミロ  詩歌藩国日報/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる