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zoom RSS 『寅ブルパニック 外伝-一生を捧げる趣味・赤坂 菊華の場合』:鈴藤 瑞樹

<<   作成日時 : 2007/01/30 18:55   >>

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それは藩国会議が終了した頃、王都で起きたささやかな事件である。




今回の主役の名を赤坂 菊華という。
数ヶ月ほど前にふらりとやってきて、そのままこの国へ住み着いてしまった男である。
一見すれば北国人特有の真っ白&フサフサのモヒカンヘアーが目にも眩しいナイスガイであった。
しかし人間見た目通りとは限らない。この人物、少しばかり人とは違った趣味を持っていた。

すなわち、メードさんである。

自他共に認めるメードさん大好き人間であり、寝てる時と戦闘中以外は常にメードさんのことばかり考えているともっぱらの評判で、本人もそう公言してはばからなかった。
事実、彼がわんわん帝國に所属しているのはできる限りバトル・メードさんの近くにいたいからであり、それ以外には本当に何も考えていなかった。
彼は言う。メードさんさえいれば、他には何もいらないと。

いつかメードさんを雇って暮らす、という生活を夢見る彼に朗報が届いた。
次期獲得アイドレスに、バトルメードの名が上がった。
その知らせを聞いた夜、彼は同僚である士具馬 鶏鶴と飲みに出掛けた。二人はモヒカン仲間ということもあって何かと気が合った。
その席で士具馬はかねてから疑問だったことを口にした。
「なぁ、なんでそんなにメードさんが好きなんだ?」
士具馬にとっては軽い気持ちで言った一言だっただろう、だがしかし。
「なんで、だと!?いいか、メードさんってのはな!俺の命であり魂だ!!例えるならそれはジュリエットにとってのロミオであり月にとっての太陽でありしゃぶしゃぶにとってのゴマダレと言っていい!それは神の造りたもうた至高の芸術!英国が生んだ究極の奇跡だ!!そう、全てはメードさんより生まれメードさんへと帰る。それはもはや疑いようもない『必然』―!!」
いきなり士具馬の胸倉を掴んでガクガク揺さぶりながら演説をぶち上げる赤坂。
後に士具馬は語る、あの時の赤坂を止められる奴がいるとすれば、それはすでに人外の存在ですよと。


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士具馬にメードさんの素晴らしさをとっくりと語ったその数日後、赤坂 菊華は大通りのど真ん中で腕を組み、仁王立ちしながら泣いていた。
悲しいことがあったわけではない。むしろその逆で、あまりの嬉しさから思わず溢れ出てきた涙であった。

その日、彼は藩国会議へ参加する為に政庁へ向かっていた。
そこで彼は街中がすこしだけおかしいことに気がついた。変わった格好の集団とすれ違ったのである。
青い色調で統一されたエプロンドレス。
手には各々の背丈に合わせた箒型銃。
そしてふさふさの犬耳。
間違えようもない。夢にまで見た、バトル・メードである(他にも銃士姿の犬士や女装した男のバトル・メードもいたのだが、それらが彼の目に入ることはなかった)。
アイドレスとして正式採用が決まり、にわかに増えてきたのであった。


よかった。この国に来て本当によかった。うんうん、と一人で納得している。
心底そう思い、空を見上げる赤坂。その日は朝から快晴で、これからの明るい未来を祝福しているかのように思えた。


そうして大通りで仁王立ちに至るのである。
この時点ではためには相当な変人に見えており、半径数mの範囲にまったく人の近寄らない絶対領域ができあがっていた。
「むぅ、犬耳メードもいいがやはり定番としてヘッドドレスを着けたクラシックなメード服も押さえておきたいところだな。見たところ少々装飾が少ないようだが、もう少しフリルを足すべきではなかろうか。しかしほぼロングスカートで統一されているのは高評価。フレンチメードはメードというものを根本から履き違えている感があるからな」
などとブツブツ一人でつぶやかれては近寄りづらいのもわかる気はするのだが。

「ママ、どうしてあのおじちゃんは泣いてるの?」
「しっ、見ちゃだめよ」

などと言われても気にも留めない。そもそも耳に入っているのか怪しいところであった。

それから数時間の時が過ぎ、藩国会議もとっくに終わってしまった頃、会議に遅刻したことにも気づかず彼はまだその場で思考に没頭していた。
するとどこからともなく現れた警官達が声をかけてきた。さすがに不気味に思った通行人が通報したらしい。
「キミ、いったいここで何をやっとるんだね」
と言ったものの、赤坂はまるで聞こえていないようでいまだブツブツと独り言を続けている。
溜め息をついて、こりゃあかんわとすぐに諦る警官達。
「詳しい話は署で聞くから、ちょっと来てもらおうか」
そう言って赤坂の腕を掴んで引きずってゆく。ここまで来てもいまだ気づくそぶりすら見せない赤坂。


そうだ、メードさんを雇おう。
給料は安いが、頑張って積み立てた貯金もある。朝飯抜いて切り詰めれば、おそらくはいけるはずだ。
予定ではもうちょっと出世して余裕が出てから叶えるはずの夢であったが、今しかないとその時の彼は思っていた。
今日はいい日だ。本物のメードさんを見ることができた。
そして明日からはもっといい日になるだろう。なんてったって憧れのメードさんとの生活が始まるのだから。

幸せすぎてまた泣けてきた。実際、彼は幸せだった。数分後、警察署で説教を受けるその時までは。


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―寅ブルパニック外伝・一生を捧げる趣味・赤坂 菊華の場合・了―
(注)この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件、寅パニなどにはいっさい関係ありません。なので文句は受付な(ry
あ、いや、嘘ですなんか気にいらないとことかあれば鈴藤 瑞樹に直接どうぞです。

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