詩歌藩国日報

アクセスカウンタ

zoom RSS 帝國への不信 - 鈴藤 瑞樹

<<   作成日時 : 2007/01/27 13:59   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0


私、ポチは以下のように決定する。友情にまさる剣はなし。国をあげて確かに決定を実行せよ。

〜わんわん帝國宰相シロの勅命書より〜


その日、詩歌藩国の藩王、九音・詩歌は政庁の執務室で仕事をしていた。
数日前の戦争で発生した膨大な書類仕事をただ黙々とこなしている。
時刻はすでに深夜にさしかかろうという頃で、政庁に残っている人間は九音を除けばあとは仕事熱心で知られるエクセラーこと都築つらねくらいのものだろう。
「九音様」
ふいに声がかけられる。吏族の寅山 日時期であった。
「首尾は」
「は、監視役6名を発見、遠ざけました。現在この部屋を中心として半径600m圏内に監視はありません」
微かに頷き、ついで背もたれにおもいっきり体重を預ける。ここ数日は監視に見張られっぱなしだったこともあり、ようやく一息、といった面持ちであった。
「御命令通り、周囲には兵士達を警戒にあたらせております」
「よろしい。あと一時間程時間を稼いでくれ」
「御意」
そのまま影に溶けるように気配ごと消える寅山。まるで本物の忍者だなと九音は思った。
普段こそおちゃらけた風を装っている寅山だったが、実際のところ相当な切れ者だった。
吏族として出仕しているのもその卓越した頭脳と行動力を持っているがゆえだった。
表側では摂政である星月典子、都築つらねを側近として置く九音だったが、こういった荒事には寅山を用いることがままあった。
ふと壁に掛けてある古い振り子時計を見やる。九音の読みが正しければ、そろそろのはずだった。


足音が聞こえてきた。ドタバタとうるさいことこの上ない音だった。しかし不思議と気になってしまう、そんな足音だった。
「来たな。夜明けを告げる騒々しい足音が」
心底嬉しそうに、九音はそうつぶやいた。


「九音さまっ!脱藩させてくださいっ!!」
執務室に入るなりそう口にしたのは、赤縁眼鏡がトレードマークの豊国 ミロであった。
「あぁ豊国か。先日の電話の件かと思ったが、なんだ別件か」
あぅ、ととたんに顔を赤くしてちぢこまる豊国。
「あ、あれはですね?『全員生還&ナニワセット密輸成功やったぜヒャッホウ大宴会』の時に酔っ払ってたせいでして」
「あの時は驚いたぞ。いきなり『くおんさま〜ワタシすずふじくんとけっこんしますんでてつづきよろしくですぅ〜』なんて電話がかかってくるとはなぁ〜」わざわざ声マネまでしてからかう九音。


もちろん深夜、九音が今日と同じように執務室で書類を片付けていた時のことだった。
戦後処理で寝不足だったこともあり、少々気の立っていた九音はブラックジョークのつもりで役所の人間を起こして二人の婚姻届を受理させてしまった。
さらにテレビ局に枠を空けてもらい士気高揚の為だとか言って二人の結婚を朝のテレビ番組で取り上げてもらえるよう手をまわした。
あえてその時の九音の心情を表現するとするならば
(フフフ、浮かれていられるのも今のうちだけだ。明日の朝には地獄を見せてくれる……!!)
であった。偉い人を怒らせると後が怖いとはまさにこのことであった。


うー、と半泣きの豊国を見て少しやりすぎたかとも思ったが、面白かったし謝るのはやめにした。
「で、脱藩の話だったか」
「あ、そうそうそうでした!ジェントルラットが危ないって聞いたんですよー!」
机の上に手を組み、その上に顎を乗せながら、寅山を見張りに立たせて正解だったなと考えた。
今の会話を聞かれたら詩歌藩国とて即座にジェントルラット藩国と同じ運命を辿ることになる。
「ところで豊国、知っているか」
「はい?何をですか?」
「ジェントルラットを助けに脱藩者が出たことが天領にバレるとな、国がお取り潰しになるんだ」
そ、そうだったーと頬に両手を当ててムンクで叫ぶ豊国。ころころ表情の変わる面白い娘であった。
「す、すいません今のナシってことにしてください……」
「まぁ待て。何も脱藩させないとは言ってないだろう」
え?と部屋から出ていこうとしたところで振り向く豊国。
その時、九音にしては珍しく随分と攻撃的な笑みを浮かべていた。獰猛な肉食獣を思わせるような、見えない何かに向かって反逆するかのようなそんな笑みを。
そしてその蒼い瞳は爛々と輝き、あらゆる困難を乗り越える不屈の闘志を湛えていた。
「私としても、彼等を見捨てるつもりは毛頭ない」


帰って別の手を考えようと思っていた豊国は九音の顔を見てようやく理解した。
あぁ、やっぱり九音さまは正義の人だ。この人に仕えることができて幸せだったと。
「そうですよ、だいじょぶです!ワタシ、兄弟を見捨てるなんて絶対おかしいと思います!!」
別にジェントルラットに親兄弟がいるわけではない。彼女の両親は詩歌藩国の片田舎でのんびり余生をすごしている。
たとえ血が繋がってなくたって、おんなじ正義を目指して戦ったんだから私たちは兄弟だよと彼女はよく戦友達に語っていた。


「となれば、一人目は豊国で決まりだな」
そう言いながら九音は書類上での豊国の扱い、どう監視の目を逸らすか、替え玉の用意について、ナニワ変身セットは使そうだ等々。必要な行動について考えをまとめていた。
「よし、一週間後のトモエリバーの整備を手伝え。詳細は追って伝える。下がってよろしい」
はいっ、と元気な声を残して執務室を出る豊国。
また忙しくなりそうだなと、窓の外に見える満月を見上げながらそう呟いた。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
帝國への不信 - 鈴藤 瑞樹  詩歌藩国日報/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる