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zoom RSS 詩歌藩国の日常〜雪村しふぉんの日常〜

<<   作成日時 : 2007/01/12 00:57   >>

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時間は午前が過ぎ去ろうかという頃、部屋の中で彼は読書をしながら溜息をついていた。
本のタイトルは…かすれてて読めるものではない。
少し埃も被っている。彼は大して気にもとめていないようだが…
ページをめくる手は進む。
よく見るとページにも所々穴が開いている。
ずいぶんと年季の入った本である。
それとは別に、テーブルの上にはいくつかの辞典がある。

ずり下がった眼鏡を指で直し、再び彼は溜息をついた。
彼が窓の外に目をやると、遠くに赤いマフラーを捲いた直立歩行をする犬がいた。
「シィ様……子供と遊んでるのかな……」
王犬としてパトロールを怠らないシィ様の周りにはいつも子供がいる。
そりゃもう、テレビから出てきたかのようなヒーローに違いない。
何せ直立歩行する犬だ、彼も始めてみたときは目を疑った。

そろそろ「彼」の説明をするべきだろうか。
彼の名前は雪村しふぉん。
目つきが悪いと皆に言われるがただの生まれつき。
今のように一人で本を読んでいるときは眼鏡をかけている。
部屋のそこらに散らばる本の数が「三度の飯より本が好き」という彼の性格を現していると言っても過言ではないだろう。
否、過言ではない。と断言しておこう。
今も尚その手に持つ本…ボロボロの古書を解読しようとしているのがそれを肯定していた。
外では人々の笑い声が聞こえるというのに……この男は……


日は既に夕暮れ。
部屋の中では、いまだ本と奮闘するしふぉんの姿が…
「はぁ……」
今日何度目になるであろう、その溜息は白く溶けた。
もう日も落ちるのだ、寒くて当然である。
小さなランプを取り出し、火をつけると彼はまた本に向き合う。
ページはもう終わりに差し掛かっていた。
先ほどよりも本が増えているのは気のせいだろうか?

メモを取っていた手がようやく止まる。
ページが終わりを迎えたのだ。
本を閉じたしふぉんの瞳から涙が零れ落ちた。
しふぉん自身、それが何故なのかはわかってはいなかったが。
思い立つと、しふぉんは筆を執りはじめる。
今の気持ちを一つのカタチにするために。
それがしふぉんの唯一(と言っても過言ではない)趣味なのだから。

不意にドアをノックする音。
「しふぉん、いるか?」鈴藤瑞樹である。
「鈴藤?どうかしたか?」
この国に来て間もないしふぉんの世話係(?)のような立場にいる鈴藤瑞樹。
今日は一体何の用で現れたのか。
「特に用はない、が……一日中家の中にいるのもどうかと思ってな」
暇があれば来る、人のいいこの男はいつも笑っている。
しふぉんは眩しそうに鈴藤の顔を見る。
「本を読んで過ごすのは俺の生きがいなんだ」
言いながらしふぉんは本を片付けて奥から本に埋まった椅子を出す。
それによってまた本が崩れたのは……この際見ていないことにしよう。

「お前はまだ真実を追い求めてるのか?」
椅子に座りながら部屋を見回し、鈴藤は言う。優しい表情のままで。
「別に。俺は俺の真実を見つけるだけだから……」
あからさまにしふぉんの表情が曇る。
無意識に右手で左の手首を押さえていた。
「『あの人』に追いつくためか?」
鈴藤の眼が引き締まる。
真剣なその表情は、一瞬怒りを浮かべているようにさえ思わせる。
「追いつく。じゃない…追い越すんだ」
先ほどまで悪戦苦闘していた本を手に取るとしふぉんは優しく微笑む。
こんな表情を見れるのは鈴藤くらいだろう。
鈴藤の顔が優しいいつもの表情に戻る。
するとその手元に本が放り投げられた。
「読んでみろよ。中々に深くて考えさせられるぜ」
椅子から立ち上がるとしふぉんは部屋を出て行った。

鈴藤に手渡された本は先ほどの古書。
もちろん、しふぉんは辞典を使って解読しながら読んだものだ。
「おいおい、俺にコレを読めって?冗談きつい……ん?」
鈴藤はテーブルの上においてある汚い文字のメモを見つけた。
まさにこれこそ暗号か。とでも言うような内容だが、痕跡を見る限りしふぉんが書いたものらしいが。
それを鈴藤は手に取る。
それは先ほどの本を読み終わったあと、しふぉんが書いた一つの詩。
そこには先ほどの本のタイトルも書いてあった


『笑顔と傷跡と』

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ヒーローは、誰からも理解されない。
新造人間キャシャーンは、人間のために、悪の帝国、アンドロ軍団と戦っている。そして、多くの人の命を・・・ ...続きを見る
プチリタ 石井貴士365日語録
2007/01/12 12:04

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