詩歌藩国日報

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zoom RSS 岩崎祭り祈願SSだったもの(裏マーケット入札直後) - 鈴藤瑞樹

<<   作成日時 : 2007/01/11 20:51   >>

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キャスト:酒巻 孝司+星月 典子+東雲 戒+須藤 鑑正+清水魁斗+経

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 詩歌藩国、王都イリューシア。
政庁の廊下で、酒巻 孝司は悩んでいた。
青の厚志と、岩崎 仲俊を詩歌藩国に逗留させる。
先ほど藩王に告げられた決定を、嬉しく思いつつも厄介に感じていたのである。
廊下を行ったり来たりと、いかにも悩んでいます、といった様子の酒巻。
身長はそれほどでもないが、顔が濃いので難しい顔をしている様はなかなかに迫力があった。
「ハッ、そうか!自分で立候補すれば!あ、いやそれはさすがに大人気ないか……」
この人物、藩王付きの文士として常に礼儀正しく、理路整然とした行動を取りたいと常々思っているのだが、元々が直感で行動するタイプであるためつい思いつきで動くことが多い。
あれは考える前に動くといい結果を出すんだ、とは先王ライールの言葉である。

「どうしたんです?酒巻さん」
うわーどうしよーと頭抱えて座り込んでた酒巻に声をかけたのは、星月 典子である。
優秀な技師として詩歌藩国の為に尽力してきた人物であり、その功績を認められて先日華族に任じられた。
慣れない華族の仕事でテンパりながらも慌しく政庁を走り回ってたら、変な動きしてる酒巻を見つけたのである。
「あぁ、星月殿。実はですね」
ごにょごにょごにょ、と耳元に小声で伝える。ふむふむ、と頷く星月。
「と、いうわけなのですが」
「なるほど、つまり酒巻さんも岩崎くんと一緒に踊りたいんですね」

ぶっ倒れる酒巻。

「大きな声で言わんでください!」「あら、聞かれたらまずい話だったんですか」にやー、と笑う星月。
北国人特有の白い肌・白い髪のおかげで落ち着きのある控えめな感じに見えるが、実はおてんばで人をおちょくるのが好きな星月であった。
どうもやりにくい人だ、と思う酒巻。人付き合いが苦手な彼は、からかわれると弱かった。
「いいじゃないですか。恋愛に身分も国境も性別も関係ないですよ」
「いや、別にそういうことでは」
「まぁまぁまぁ。それで経さんに悪いんじゃないか、って話ですよね」
つまりは、そういうことである。彼もまた岩崎ファンの一人なのであった。


 街中を特にどこへ向かうでもなく歩く酒巻。
星月から、とりあえず経さんと話し合ってみたらどうですか、と言われて経を探していた。
途中、小さな公園のベンチに見知った顔を見つけた。近づいていくと、向こうも気づいた様子だった。
「こんにちは、酒巻さん。お散歩ですか」
「須藤殿こそ、優雅ですね。日光浴ですか」
須藤 鑑正。最近になってにゃんにゃん共和国から移り住んできた青年である。
面倒だからか髪を伸ばしっぱなしにして後ろで縛っている。前髪も、前が見えないんじゃなかろうかというほどに長い。
穏やかな性格で、酒巻とも気があった。
「いや、この子達にお昼ごはんをと思いまして」
須藤は集まってきた小鳥達に餌をやっていた。この人物、妙に動物に好かれており、この時も公園中の動物が集まってきていた。
イヌ、ネコ、サル。更にはウサギにビーバーまでいる。
「なぜビーバーがこんな公園に?」
酒巻の言葉を無視して動物達はどんどん増える。ダチョウ、ペンギン、ワニにライオン、北極クマにナウマンゾウまでいる。
「ちょっと待て、ナウマンゾウは絶滅したはずでは」
パオー、と威勢のいい掛け声と共に須藤が持ち上げられる。象の鼻でぶんぶん振り回されていた。
動物達が逃げたぞー、という声がする。ハハハ、可愛いなぁと須藤。思考がついてきていない酒巻。
後に”ポ○モンマスター須藤事件”と呼ばれることとなる一連の騒動、その始まりであった。


 「ひどい目にあったな……」
ぐったりとした酒巻。あの後、象を始めとする動物達を捕獲する為に四苦八苦したのだった。
それも結局は、ほとんどの動物を須藤が大人しくさせたおかげで収集がついたのだが。
気がつくと街外れまで来ていた。さすがにこのあたりまで来ると人の姿もまばらだ。どうしたもんかな、と考えているとふいに肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、そこにいたのは清水 魁斗であった。この人物、詩歌藩国有数の仮想飛行士で、根源力のみでいえば藩王である九音・詩歌をも上回る。
(提出できなかった根源力含めれば互角……っby藩王)
戦場では青緑色のアイドレスを駆る様から、天河石、という二つ名で呼ばれていた。
「け、気配を消して後ろに立たないでくださいっ」
肩に置かれた手を振り払って、酒巻が言った。街では人当たりのいい人物として評判だったが、仮想飛行士として戦った経験のある酒巻にはわかる。
清水がその気になれば、あっさりと自分を殺すことができる、と。つまるところ、酒巻は清水に畏敬の念を抱いていたのだ。
「ごめんね。でも何か迷ってるみたいだったから、できることなら力になってあげようと思って」
にこやかに笑いながら言う清水。なんでわかったのだろう、と思いつつも経を探していることを伝える。
「あぁ、経ちゃんね。ちょっと待って」
そう言って、目を瞑り、空を見上げた。そのまま待つこと数分。

風が、吹いた。

 「ここから南、サファイアラグーンのあたりだね」
「わかるんですか」心底胡散臭そうに言う酒巻。
「うん。風が教えてくれるんだ」
そう言った清水の瞳は、夜空の天の川みたいに綺麗で、まるで本物の天河石のようだった。それを見て、酒巻は清水の言葉を信じてみることにした。
「わかりました。南ですね」
「うん。行っておいで」


 サファイアラグーンのほとりで酒巻は経を探すが、なかなかどうして見つからない。そもそも人が見当たらない。
清水さんにかつがれたかな、と思ってラグーンを見やると、寝そべっている人影発見。経かもしれない、と思い近づく。
が、顔を見た瞬間反転、見つからないうちにと逃げの体勢にうつる。しかし
「お〜?なんだ、酒巻じゃん」
そこにいたのは東雲 戒であった。
「あ、あぁ。お久しぶりですね、東雲殿」あからさまに動揺する酒巻。顔が引きつっている。

 数年前に何処からか流れてきて、そのまま詩歌藩国に住み着いたこの東雲という青年を、酒巻は激しく苦手としている。
実はこの東雲という男、見た目は大人しそうに見えるが恐ろしく喧嘩っぱやく、その上強い。なんでもここへ来てから一度も負けたことがないという。
酔っ払うと輪をかけて手がつけられなくなるのだが、過去にそれを止めようとした酒巻はボコボコにされた経験がある。
その話を聞いた前藩王ライールが面白がって東雲を仮想飛行士に任じたことで、酒巻にも縁ができてしまったのだった。
「珍しいな、こんな場所で会うなんて。今日もお国のためにお仕事かい?」
「いえ、実は人探しの最中でして」聞くこと聞いて、さっさと立ち去りたい酒巻。手短に用件だけを告げる。
「経ちゃんね。見たぜ、さっきここを通った」
「本当ですか?どっちへ行きました?」
「教えてもいいが、ひとつ頼みがある。もっちろん、聞いてくれるよなぁ?」東雲の中で最大限に優しい声。肩に手をまわされ、逃げられない。
まぁ、彼の頼みを断れば殴られるのは目に見えていたので内容を聞くことにする。
「どうしても清水に会いたいんだ。ってわけで、奴を誘い出してほしい」
「清水殿なら、ついさきほど街の外れでお会いしましたよ」
「なに、ほんとか!?詳しい場所教えろ!」酒巻の首を引っつかんで揺さぶる東雲、苦しむ酒巻。
酒巻が場所を教えると、すぐさま走り出していった。
東雲が目をつけた中で、まだ戦っていないのは清水と九音藩王のみだった。さすがに藩王にケンカ売るのはまずいと思ったのか、もっぱら清水を追いかけまわしている。
なんでも清水は東雲とケンカするのを延々と避け続けているというのだ。政庁での仕事で顔もあわせるだろうに、どうやっているのかは酒巻には見当もつかないが。
あ、経殿の居場所聞きそこねたな、と思ったがもう声も届かないところまで行ってしまったので、諦めて自力で探すことにした。


 はたして目当ての人物は、いた。
「〜♪」木陰で古い歌を口ずさみながら、水の流れを眺めている。
頭は大きなパンチパーマで、寒い日に抱きついたらさぞ暖かだろうと、酒巻は常々思っている。
様々な国を流れに流れ、都築藩国が合併吸収された折に詩歌藩国へ移ってきた人である。昔は共和国にいたこともあるのだそうだ。
普段仕事をしている時もそうなのだが、なぜかチャイナ服とメード服をごっちゃにして作ったような変わった服を着ている。
変わった仕事着だと思っていたが、普段着だったようだ。

「あ……酒巻さん」

さて、どう声をかけようかと迷っていたところ、向こうに気づかれてしまった。
まぁどうせ口下手なのだしいいか、と考えて経に近づく酒巻。
「隣、よろしいかな」
「あ、はい、どうぞ」
経の横に座る。少しだけ離れる経。横目で見ながら、割と人見知りをする人かなと考える酒巻。

「…………」
「…………」
お互い何をしゃべるでもなく、ただ前を見ていた。

「えっと、その、酒巻さんも岩崎さんのファンなんですよね」酒巻より先に、経が話し出した。
「それで、やっぱり岩崎さんと一緒に踊りたいですよね」
「は、しかし」「ストップ!」そこから先を、経は言わせなかった。

 有名人がやってくる。詩歌藩国始まって以来の出来事である。それも岩崎が来るかもしれないと知って、経はうかれて、はしゃぎまくった。
具体的には仕事サボってサファイアラグーンまで来てうおーいわさきーと叫んでいた。普段はシャイな性格だったが、愛を叫ぶ時は全力全開の女だった。
そして、ダンスパーティーなんだから踊りの練習しなきゃとか、会って最初になんて言葉をかけようか、とか考えていてふと気づいた。
同じく岩崎のファンである、酒巻のことである。
どちらも岩崎のファンとして詩歌藩国内では有名であった。当然ダンスは二人のうちどちらかが踊るのだろう、と誰もが思っていた。
もし自分が岩崎と踊れば、酒巻は悲しむだろう。逆に酒巻が踊ることになったら、多分自分は泣くだろうと、経は思った。

 「それで、ですね、あの」顔を真っ赤にしながらなんとか言葉を絞り出そうとする経。深呼吸。よしっ、と気合を入れる。
「それで、ですね。酒巻さんさえよければ、三人で一緒に踊りましょう」まだ少し顔が熱かったが、なんとか言えてほっとする経。
有名人がやってくる。詩歌藩国始まって以来の出来事である、きっとお祭りになるだろう。お祭りというのは、皆が一緒に楽しむべきもののはずだ。
皆が楽しんでいる中で、悲しい思いをするのはおかしいと、そう経は考えた。そうして出た答えが、三人一緒に、であった。

かたや思考が停止し呆然としている酒巻。突発的な事態に対処できない人なのであった。
なんとか頭の中を整理しようとまず空を見上げ、次に腕組みしながら地面を見つめて、たっぷり一分かけて考えた後、まっすぐに経を見つめてから
「はい、ありがとうございます」感謝を込めて、できるかぎり優しくそう言った。

 なんとも幸せな雰囲気を漂わせる二人。はたから見ればカップルに見えたろう。
ふいに声をかけられる。
「こんにちは、お二人さん」
「うわっ!」「きゃ!」そこにいたのは、清水であった。
「清水さん、なんでここに。というか東雲さんに会わなかったんですか」てっきり二人の壮絶な殴り合いが始まってるもんだと思っていた酒巻である。
「うん、慣れてるからね」何に慣れているのか疑問に思ったが、それより先に清水が口を開いた。
「藩王様から伝言を頼まれててね。二人とも、岩崎氏逗留の際ダンスパーティーが開かれるのは知っているだろう?その時のお相手は経さんがするように、と藩王様直々の決定だよ」
「ほ、本当ですか!?」と嬉しすぎて叫んでから、あ、しまったと隣を見る。案の定、泣きそうな酒巻の顔がそこにあった。
「そんな!藩王様〜!」藩王に直訴しようと走り始める酒巻。

 数日後、岩崎ではなく青の厚志が来ると知った二人はまた騒動を巻き起こすのであるが、それはまた、別の話。

〜終〜

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